大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡家庭裁判所 平成2年(少)1187号 決定

主文

少年を福岡保護観察所の保護観察に付する。

理由

(非行事実)

少年は、昭和62年4月に高等学校に入学したものの、バイク盗、無免許運転、無断バイク通学、校舎の窓ガラス割り、怠学などを重ねた挙げ句、平成元年1月末退学し、以来親の監護に服さず、夜遊び、パチンコ、暴走行為などを繰り返していたが、平成2年1月始めころからは、シンナー仲間と交際を始め、昼夜の別なく何人もの男女が少年宅を溜まり場にして、シンナーを吸引し、母親や警察の注意・指導を聞き入れず、かえって母親が警察に相談に赴いたのを察知したのか外泊するなどしているものであって、このまま放置すれば、毒物及び劇物取締法違反や道路交通法違反、更には金銭に窮して窃盗等の罪を犯すおそれが多分にある。

(法令の適用)

少年の上記非行事実は、少年法3条1項3号イ、ニに該当する。

(処遇の理由)

少年の本件非行の動機、原因、態様及び罪質、少年の資質、環境、これまでの非行歴、とりわけ、少年は、幼少時に妹と共に養護施設「○○○園」に預けられ、小学時代は問題行動もなく生育したが、中学進学後万引の問題行動があり、中学卒業後高校に進学し母親のもとに引き取られたが、高校2年生時に原付自転車の窃盗、無免許運転、無断バイク通学の問題行動が目立ち、高校も中退して生活が乱れ、平成元年7月ころ普通免許を取得して車を購入し、そのころ暴走族のメンバーと知り合い、バイク(400cc)を盗んで乗り回すうち、同年11月にバイク(400cc)を購入し、消音器を改造のうえ、高校に乗り付けて爆音を響かせ授業を妨害し、同年12月から平成2年1月にかけて少年の部屋が溜まり場となり頻繁にシンナーを吸引するなどしたため、同年2月23日虞犯事件として当庁に係属し、同日観護措置をとられ、同年3月20日審判により中等少年院送致決定をうけ、同月23日福岡少年院に収容されたが、少年及び保護者(実母)からそれぞれ抗告申立がなされ、同年4月19日福岡高等裁判所の破棄・差し戻し決定により、再度当庁に係属したため、同年4月19日再度観護措置をとられ、同月27日審判の結果試験観察(身柄付補導委託)により、受託者○○方(北九州市小倉南区○○町×丁目×番××号)に委託されたこと、その後約4か月を経過するころから補導委託の解除時期を気にして反抗的態度も見られたが、家庭裁判所調査官による注意もあって、反省の態度を示し、その後事故もなく一応受託者の指導に従ったこと、幼児期に施設に預けられたため、母親にたいする感情は複雑であり、家庭内において母親に肉親としての情愛を素直に表せるような母子関係を築く必要であるが、母子関係の改善は未だ十分に図られていないこと、少年は、これまで遊興本位な生活態度で勤労意欲に乏しく、情緒面の未熟さや性格的な偏りが見られること、その他少年の行動傾向、保護者の態度等を併せ考慮すると、少年の健全な育成を期するためには、少年を相当期間保護観察に付するのが相当と考えられる。(なお、母親との葛藤を解消するため、少年が抱いている母親に対する理想像と現実を埋めるよう、保護司に双方の努力を求めるよう勧告する。)

よって、少年法24条1項1号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 吉武克洋)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例